スポンサーサイト
2008-09-08 16:02 |
ふしあわせ
いざ仇を目の前にすると、私は思わず怯んでしまった。
私よりいくらか幼い容貌、私よりいくらか小さな背丈。
しかし、見れば憎しみが沸いてくるには違いなかった。
その細い腕が振りおろした刃が、私の「彼」を引き裂いたのでしょう?
盗み見る度袖口から覗く白い腕が、私をじりじりと追い詰める。
なんておそろしい。
なんて穢らわしい。
そんな腕、なければいいのにと。

なのにその腕は今、私をやわらかく抱き締めている。
初めて会ったときよりは随分と太く、男らしくなったその腕が。
崩れ落ちそうになった私の肢体を、力強く支えている。
おそれどころか、安息すら感じられた。
このまま彼を許して、融け合うことができたならどんなに幸せだろう。
私の顎にかかる指が、私のそれに重なる唇が、私を見据える大きな瞳が、抱きしめる腕が、あなたのものでなかったのなら、どんなに気が楽だろう。
息さえできない、こんな海の底のようなまどろみでは。

抱きしめられて目を瞑るたび、、私のなかに、しとしと血の雨が降る気配がする。
2007-05-13 00:35 | SHORTSTORY | Comment(1) | Trackback(0)
Comment
このコメントは管理人のみ閲覧できます
- 2007/05/14(月) 19:22:11) 編集

コメントを書く
#

管理者にだけ表示
Trackback
Trackbak URL:http://coquette.blog5.fc2.com/tb.php/351-155e4313
09
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
--
>>
<<
--